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イタリアいなかまち暮らし

イタリアいなかまち暮らし

土地購入難航

土地購入難航

相方にはもうひとつ目標があった。「次にレストランを開くときは、郊外に土地を買って、住居と兼用の店をいちから建てる」ということ。
そもそも私たちが知り合うよりずっと前の8年前、相方はそれまで6年間経営していたレストランを閉めた。6年という大家側から勝手に契約を打ち切られない保護期間の後、階上に住んでいる大家に、飲食店はうるさいからと契約を打ち切られてしまったからだそうだ。
繁盛していた店を閉めざるをえなくて、相当悔しい思いをしたそうだ(彼はその後なかばやけくそで放浪の旅に出た)。それからはやはり自分の土地でなければ、と思うようになったと言う。

しかしこの夢もいまのところ結局お預け状態なのである。

 日本の事情はよく知らないが、イタリアでは、レストランは商業地でなきゃ開けないとか、一つの町に飲食店は何件までしか作っちゃいけないとかかなり規制が厳しい。(競争を避けるための政府の陰謀?)相方も賃貸でレストラン経営したことはあっても、一から建てたことは無いし、経営してた7年前よりも規制が厳しくなったみたい。

こっちだって2階に住居も建てたいし、幹線道路ぞいだけどうるさくない所とか、景色がいいところとか、プロパンガスじゃ嫌とか下水がなきゃ嫌とかいろいろと希望もあって、条件が合うところがなかった。それにまだ一つの町に根を生やす覚悟もないし。(相方は売ればいいさって言うけど、それも面倒)

 あと土地売買は不動産を介さず行ったほうがかなり安く済むので多くの人が直接売買を望んでいる。(直接売買は日本と比べてかなり簡略化されてるらしく、「公証人」という人のところに行って売買契約をすると、その契約を公証人が保障してくれる。)
買いたい人としては、看板を見つけたり、生活情報誌を毎回チェックしたり、人に聞いて回ったりというのが手段である。結局聞いて回る方法が一番多かった。

 以前目をつけて移住した町ラクイラは、町のどこからでも高い山が背後にそびえるのが見える、絵葉書のような町でかなり気に入っていたのだが、なかなか飲食店を開ける条件で納得できる土地がなかった。街中で店を借りようかとも思っていたが、これも相方が納得いかずに3ヵ月後にあきらめた。本格的な魚介レストランが3軒もあったということもある。

次に住んだカンポバッソはラクイラより人口が多いにもかかわらず、魚介レストランは1件のみ、しかも人口の割には発達の遅れた町のせいか土地は安く、売られている土地も多く見つかった。

しかしせっかく見つけても、本人がちがう土地に住んでいて地元にいなくて今度帰ってきたときに話を、とか兄弟6人の共同財産なので話がまとまらないとか。やっと本人を見つけても分不相応な値段を吹っかけてきたり、売りたいのか売りたくないのかあいまいな態度の人も多い。大きい金になるなら売ってもいいけど、そうじゃなきゃとっておいたほうがいい、ということか。
相方はよく「どいつもこいつも大金抱えたサンタクロースをアホみたいに口を開けて待っていて・・・」と愚痴を言っていた。相続税が非常に安いせいもある。そのせいかイタリアには使われてもいないのに売られてもいない荒地が多い。

そんなわけだし、ものがものなだけに売るほうも急がずあわてず相手を焦らしつつ、買うほうもあせりを見せたら負けなので、相手がつついてくるまで放置・・・そんなことしてたら2ヶ月3ヶ月なんてあっという間。土地を見つけること自体も相当時間がかかっているし、こんなことを繰り返してどれも結局まとまらずに破談。あとやっとまとまったと思って知り合いの土地鑑定士を連れてったら、非常に水はけが悪いという発見があったり(まとまる前につれてけよ、相方!)して、あきらめるしかなかったとか。今考えたらさっさと見切りをつけるべきだった。家の両親からは「いったい何をしてるんだ」と白い目で見られていた。

この水はけの悪い土地をすっぱりあきらめたのがちょうどカンポバッソで土地探しを始めて約一年。その時点で商談進行中どころか新たに売られている土地の発見もなかったので、相方にあきらめないかと持ちかけた。

そもそもこの時点でカンポバッソと無職生活に飽きてきた私が相方の尻をたたいて、一緒にペルージャに(相方の)職探し旅行に出る。もうちょっと開けた都市で雇われコックとして働きながら、落ち着いて郊外の土地を探したほうがいいと考えた。
しかし人に雇われるのが大嫌いな奴はああだこうだと理由をつけて求人に応募しない。しても気に食わない。結局4日ほど滞在して帰った。ちなみに夏だったことを幸いに宿泊はテントを持っていってキャンプ場泊という貧困出稼ぎ労働者ぶりである。

で、奴の出した結論は、やはりペルージャは思ったより都会過ぎて土地探しにも向かないということであった。
次に私の勧めた方針は、賃貸でまずレストランを始めるということである。そうすると経営している間、地元に根を生やして足場を固め、そこでできたコネもフル活用してじっくり吟味して土地を買い、レストランを建ててそこへ引っ越ることができる。あるいは経営を誰かに譲ってどこか違う土地に行くこともできる。相方はすでにカンポバッソ内にいくつか飲食店の賃貸物件があることはチェック済みである。こうして候補物件の詳細な調査が始まった。

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